GOTO-ONO Research Group
Department of Chemistry, School of Science
Institute of Science Tokyo
分子キャビティの有機合成への応用
酵素反応に含まれる反応活性種は、酵素基質以外の分子の活性化にも有用と考えられ、未開拓の反応性の宝庫といえます。従来その不安定性のために人工系での合成が困難であった酵素反応中間体を有機反応剤として有効に活用することができれば、新たな分子活性化法を開発できると期待されます。当研究室では、酵素反応の活性中間体を分子キャビティを用いて安定化し、生体反応モデル研究を行うだけでなく、その特異な反応性を有機合成反応に応用する研究も行っています。
ヨウ化セレネニル(RSeI)は、甲状腺ホルモン活性化に関わる重要な酵素反応中間体として近年注目を集める高反応性化学種ですが、きわめて不均化を起こしやすく不安定であるために、従来その反応性についての検討はほとんど行われていませんでした。当研究室では、独自に開発したキャビティ型置換基を活用してヨウ化セレネニルを安定に合成・単離し、酵素反応機構のモデル研究を行うとともに、Se–I結合が熱的に安定な結合であり、セレンとヨウ素が高い親和性を有することを見出しました。このようなヨウ化セレネニルの特性を活かすことで、従来は困難だったアニリン類によるアミノセレン化反応や、分子内に窒素求核部位を有する基質の窒素求核型カスケード環化反応の開発に成功しています。また、β-ハロセレニドやβ-オキシセレニドからアルケンへの効率的変換法の開発も行っています。

また、分子キャビティを遷移金属への配位子として活用すれば、金属上に導入される配位子の数を立体的に制御しつつ、金属の周辺には比較的広い反応空間を確保できると期待されます。キャビティ型骨格をもつカルベン配位子を開発し、この配位子をもつPd(0)錯体が、結晶状態において、空気中から酸素のみならず二酸化炭素を固定することを見出しました。空気中に0.04%しか存在しない二酸化炭素を固定できる人工分子は極めて限られており、遷移金属錯体結晶による固定はこれが初めての例です。

・Kuwano, S.; Kikushima, J.; Nakada, T.; Sase, S.; Goto, K. Chem. - Asian J. 2025, 20, e202500347. 【Selected as Supplementary Cover】
・Kuwano, S.; Takahashi, E.; Kikushima, J.; Sase, S.; Goto, K. New J. Chem. 2023, 47, 9569-9574. 【Selected as Front Cover】
・Kuwano, S.; Takahashi, E.; Ebisawa, K.; Ishikawa, Y.; Sase, S.; Goto, K. Mendeleev Commun. 2022, 32, 80-82.
・Sase, S.; Hashimoto, M.; Goto, K. Chem. Lett. 2015, 44, 157-159.
・Sase, S.; Ebisawa, K.; Goto, K. Chem. Lett. 2012, 41, 766-768.
・Yamashita, M.; Goto, K.; Kawashima, T. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 7294-7295. 【Highlighted in ACS Heart Cut】