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カプセル型分子の設計と内部空間の反応場としての活用

 ボウル型分子の化学を三次元的に閉じた分子キャビティの化学へと発展させ、分子カプセルの内部を官能基の反応空間として活用するという着想に基づいてランターン型分子を開発した。そして、この内部空間を活用することで、一置換シンプルエノール(分子内水素結合など熱力学的な安定化を受けていないエノール)の合成・単離に初めて成功した。その合成は、前駆体となるケトスルフィドユニットをのようにカプセルの内壁に固定しておき、光照射により内部でエノールを発生させる手法により行った。生成したシンプルエノールはシリカゲルクロマトグラフィーにより精製可能であり、結晶として単離された。さらに、このエノールはトリフルオロ酢酸存在下でさえケト化には室温・溶液中で3日を要した。これは、「シンプルエノールは速やかにケト化し、純粋な形では得られない」という有機化学の常識を覆す結果といえる。

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